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エンジェル税制の仕組みについて調べてみた

今回は、つい最近になり存在を知ったエンジェル税制について、この制度の意義や税金対策として活用できるか、調べてみました。

エンジェル税制とは


まずはエンジェル税制の仕組みについてです。そもそもは1997年に出来た制度です。意外と歴史がありますが、認知度がないので私自身も知りませんでした。そして、何度かの制度改正を経て、2020年に改めて制度が改正され、クラウドファンディング事業者が認定事業者となることも可能になりました。主な認定事業者を挙げると、FUNDINOCAMPFIRE Angelsなどです。
クラウドファンディング事業者が認定事業者となったことで各企業でPRが行われるようになり、私もそのPRを通じてエンジェル税制という制度がある事を知りました。

エンジェル税制は、簡単に言えば2つの税金に対する優遇措置(優遇措置Aと優遇措置B)があります。それを単純にまとめたのが以下の表です。
2022年5月時点のエンジェル税制の優遇措置
この優遇措置Aと優遇措置Bの違いは分かりづらいので、経済産業省が啓蒙に用意したYouTube動画を紹介します。約4分くらいの動画です。

制度の更なる詳細は、以下の中小企業庁Webサイトで詳しく説明されています。
エンジェル税制のご案内(令和2年3月31日以前の出資について)(中小企業庁Webサイト)

国内のベンチャー企業の資金調達について


私は以前に国内ベンチャー企業で勤めていた時期がありました。そして、その当時、最もよく聞いたのが日本国内における資金調達の困難さでした。例えば現在グローバルで大きな影響を持っているGAFAMも、元々はベンチャー企業でした。AppleやMicrosoftはやや歴史が長いですが、Google、Meta(旧Facebook)、Amazonはいずれも創業して30年前後の企業です。ただ、これらの企業は(米国内のベンチャーキャピタルからの調達が大半を占めるとはいえ)世界のエンジェル投資家による支援もあって多額の資金調達が行えており、今に至っています。

エンジェル投資家による投資規模は以下の実態調査報告書の10ページが分かりやすいと思いますが、日本は約43億円、米国は2.6兆円と大きく差があります。資金調達でエンジェル投資家が占める割合も日本は1.5%にすぎませんが、米国は15%となっています。
令和元年度 中小企業実態調査事業 (エンジェル税制活用による地方ベンチャー企業活性化に係る調査委託事業) 報告書(みずほ情報総研株式会社)

この状況なので日本国内のベンチャー企業が成長する為には、エンジェル投資家の量を増やすことも大事なことでは…と朧げに思っていた中でエンジェル税制について知る機会があった、という状況です。

他の税金対策と比較した場合のメリットを考える


では、「現在のエンジェル税制は積極的に活用できそうか?」といわれると、ちょっと疑問です。結論としては優遇措置Aは数百万円規模で投資しないと現制度では優遇される税負担額は極めて少なくなってしまうし、優遇措置Bは株式譲渡益を得る様な投資を行っている人でなければ活用するケースが少ない気がするからです。少なくとも投資信託で長期投資を行う人には優遇措置Bは向いていない気がします。
これについてはFUNDINOが用意するシミュレーターで実際に見てもらった方が分かりやすいと思いますので、以下にURLを掲載します。
エンジェル税制税負担軽減シミュレーター(FUNDINO)

ほかの税金対策と比べると「ふるさと納税」の方が使い勝手が良い印象があります。ふるさと納税は最大5点までワンストップ特例制度の書類を提出すれば確定申告も不要ですし(ただし医療控除などを利用したい場合などは確定申告が必要)。一方で、エンジェル税制は私が調べた限りでは、確定申告が必須になる模様です。そうなると申告が手間になるので少し及び腰になってしまうな、と感じます。この点は今後の制度改正でより使いやすい形に変更してくれれば、と思います。

以上の通り、エンジェル税制について今回は触れてみました。まだ制度自体が熟成されていない気もしますし、そもそもで認知度も低い気がしていますが、日本国内のベンチャー企業における資金調達の一つの手段として、もっと発展していって欲しい制度だと感じています。それによって日本国内企業の成長に繋がるなら素晴らしく良い形ではないか、と個人的に期待しています。

著者:gnc21
東京都在住。本業はWebサイト・スマホアプリのデータ計測支援や分析業務を行うアナリスト。
企業型確定拠出年金の運用を2020年より開始。投資運用経験は企業型確定拠出年金のほか、一般NISAによる国内株式の特定銘柄購入、投資信託やETF購入が中心。