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企業型確定拠出年金で「デメリットしかない」「ひどい」という声が上がる理由

Googleで「企業型確定拠出年金」というワードで検索をすると、「デメリットしかない」「ひどい」といった検索候補ワードが表示されます。なぜこのような検索候補ワードが出てくるのか、企業型DCの運用体験を踏まえ要因を考察してみます。

企業型確定拠出年金の制度が企業ごとに異なることによる要因


冒頭で取り上げた様に、Googleで「企業型確定拠出年金」と検索すると、以下の様な候補ワードが表示されます。
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「企業型確定拠出年金 デメリットしかない」「企業型確定拠出年金 ひどい」
企業型確定拠出年金とは、本来は老後生活に向けての資産を作っていくための制度ですが、この様なワードを見ると企業型確定拠出年金の開始に躊躇する方も多いと思います。では、なぜこのような結果が出てくるのか。以下に私見を述べていきたいと思います。

まずは現行の企業型確定拠出年金の制度が非常に分かりづらく、かつ企業ごとに運用期間が異なったり、内容も異なる点が要因として考えられます。そもそもで企業型確定拠出年金は大きく分けると「マッチング拠出」と「選択制DC」の2種類があります。多くの企業で、この2つのどちらかで制度を導入しているはずで、この制度の違いの比較は以下のWebページが非常に参考になると思います。
「企業型」確定拠出年金(平賀ファイナンシャルサービシーズ株式会社)
※ページ内に企業型導入パターンごとの違いをまとめた表があります。
※企業によっては「確定給付企業年金」など年金とつく別の制度も導入している場合がありますが、これらは企業型確定拠出年金と制度が異なるので、今回は取り上げません。

なお、言葉の定義にも触れておきます。確定拠出年金は英語だと「Defined Contribution Plan」になります。企業型確定拠出年金はニュース記事で「企業型DC」と記載されるケースがありますが、英語の頭文字をとった形です。先に触れた選択制DCは「選択制の企業型確定拠出年金」を意味しますが、私が勤める企業では選択制DCが導入されています。選択制DCは自身が希望しない限りは運用が開始されないので、よくiDeCoと比較されることが多いです。
一方で、マッチング拠出は企業が退職金の代わりに行っていることもあり、個人の意思にかかわらず加入が必須となる場合があります。ただ、従業員に対して制度の説明が不十分だと、その意義が伝わっていない可能性もあるかな、と思います。

企業ごとによる従業員への教育度合いによる要因


「マッチング拠出」や「選択制DC」など、企業型確定拠出年金は構造が複雑なので企業側から従業員(加入者)に充分な教育を行う必要があるのですが、実際には2021年の企業型確定拠出年金実態調査で見ても3年間未実施の企業もある様です。これは正直言って酷いと感じます。
企業型確定拠出年金の継続投資教育状況

制度上では、企業側(事業側)は従業員に向けて制度について十分に教育する義務があります。それが果たされていないなら、従業員は企業側に要望を挙げる方が良いのですが、日本の場合、そういう従業員は煙たがられるリスクが否定できないので、なかなか声を上げられない気もします。本来はこの制度を推進している厚生労働省がリードを取り、良い形に改善していくべきだと感じます。

実態調査については過去に調査内容を踏まえて考察記事をまとめています。実態を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
2021年現在の企業型確定拠出年金の実態とは?実態調査レポートから考察(2021/4/10)

金融リテラシーの差による要因


そして確定拠出年金は、運用実績に関しては個人ごとの金融リテラシーにより、大きく差が生じると思います。従来の年金と異なり、企業型確定拠出年金は「自身で運用を行う」制度なので、最終的に受け取る金額は金融リテラシーと運用見直しの実践回数で大きく差が表れると思います。

三菱UFJ信託銀行のレポート「データでみる企業型確定拠出年金」から、実際に加入者の運用利回り実績を見てみます。
2021年2月末の加入者運用利回りの実績
※スマートフォンで閲覧されている方はピンチアウト(2本の指で広げる)で拡大するなどしてご覧ください。

この様に「運用利回り0%~1%台」が48.6%、つまり加入者の半分近い割合となっています。ただ、その一方で「運用利回り13%以上」も5.7%存在しています。この大きな差を生み出している最大要因は、選択している運用商品の違いです。この「13%以上」の運用利回りを記録する人は、リスクを取って株式型、特に外国株式型の運用商品の割合を大きくして運用している筈です。そのような運用を行っている人と元本確保型運用商品を大半に運用している人では、運用終了時に得られる利益額は大きな差が生まれてしまいます。

すでに企業型確定拠出年金を開始している場合でも、運用商品はスイッチングという方法で変更が可能です。改めて運用する商品を検討したい場合、一度も運用商品の見直しを意識したことがない場合は、以下の記事で運用商品の特徴を確認してみてください。

・運用商品カテゴリーや毎月の積立で生じるメリット(ドル・コスト平均法)について
企業型確定拠出年金(企業型DC)の運用商品選択ポイント~前半戦(2021/2/21)
・運用商品の信託報酬、バランス型運用商品について
企業型確定拠出年金(企業型DC)の運用商品選択ポイント~後半戦(2021/2/21)

まずは「企業型確定拠出年金を行っているなら運用状況は最低1度は見直す。開始後、放置しない」。この点から改善していくことで、冒頭に取り上げたGoogle検索の候補ワードのような「デメリットしかない」「ひどい」といった事態は避けられるのでは…と個人的には思います。

そもそもで、「開始以降で一度も自身の運用実績を見たことがない」という方も多くいる様ですが、すぐに改善すべき点だと思います。企業型確定拠出年金の場合は企業が運営機関を決めていますが、どの機関でもWebサイトを保有しておりログインすれば自身の運用実績は確認できるので、Webサイトへのログイン方法は把握していた方が良いです。

企業型確定拠出年金のデメリットまとめ


ここまでの内容をまとめていくと、企業型確定拠出年金、そしてiDeCoもデメリット面として「運用資産は60歳にならないと引き出せない」といった点が良く取り上げられますが、本当のデメリットは以下の点ではないかと考えています。

  1. 企業によって加入が必須な場合もある一方で、企業における企業型確定拠出年金の教育は充実しておらず、制度の仕組みが十分に理解されていない
  2. 日本は投資による資産運用について学ぶ機会は少ないので、知識が少ない状態で企業型確定拠出年金の運用を開始するケースが多い
  3. 企業型確定拠出年金の運用に向け、継続的な自己学習がどうしても必要(投資による資産運用は、基本として他人に委ねて運用するものではないため)

これらの点は金融リテラシーの違い、と言ってしまえばそれまでですが、結果として老後の資産運用に大きく影響してきます。
ただ、私は確定拠出年金制度は老後の資産を作るために有効な制度だと感じています。アメリカでは401k(アメリカの確定拠出年金制度の通称)の運用により億万長者となった方も多くいるそうです。将来の自分を助けるべく、自身の金融リテラシーを伸ばして適切な運用を行える様に勉強を続けていくつもりです。

本ブログ内の参考記事となりますが、確定拠出年金について情報収集中の方向けに、よく頂く質問と回答をまとめました。
確定拠出年金とは?よくある質問と回答集(2021/11/15)

選択制DCのメリット・デメリットの詳細は以下をご覧ください。
iDeCoとの比較で選択制DCのメリット・デメリットを検証(2021/9/12)

直近の私の企業型DC運用実績と運用利回りについては以下をご覧ください。
ジャクソンホール会議後に資産は下落。2022年8月の企業型DC資産評価額構成比と運用利回り実績(2022/9/5)

著者:gnc21 Twitter
東京都在住。本業はWebサイト・スマホアプリのデータ計測支援や分析業務を行うアナリスト。
企業型確定拠出年金の運用を2020年より開始。投資運用経験は企業型確定拠出年金のほか、一般NISAによる国内株式の特定銘柄購入、投資信託やETF購入が中心。

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