米国の確定拠出年金制度と日米における資産運用知識の違い

この10月で確定拠出年金制度は20周年を迎えたそうです。分かっている範囲で、企業型確定拠出年金(企業型DC)は約750万人、iDeCoは約210万人と合わせて1000万人近くが加入しています。2021年8月の就業者数は6693万人とのことなので、就業者全体の2割未満が加入している計算になります。
その中で、よく日本と制度が比較される米国の確定拠出年金制度、401(k)プランやIRA(アイラ)の制度について紹介しながら、日米における資産運用知識の違いに触れていきます。


401(K)プラン


401(K)プランは、日本の企業型DCにあたる制度です。企業年金連合会だと、以下のように説明されています。
米国の確定拠出年金制度のうち、内国歳入法401条(K)項を根拠とする税制適格年金制度。401(K)の特徴には次のようなものがある。1978年の法改正で導入された。

従業員の給与からの拠出金が主となるが、企業もそれに上乗せ拠出を行うことができる。各従業員の加入は任意で従業員が自ら運用指図を行い、その結果については自分自身が責任を負う。従業員の拠出は課税所得から控除、企業の上乗せ拠出は損金算入、資産運用の収益については給付金受取りまで課税繰り延べなど、税制面で優遇措置がある。

各従業員の持分が明確であり、転職時には転職先の401(K)プラン等に移換することができる(ポータビリティ)。転職先に401(K)プランが導入されていない場合はIRA(個人退職勘定)に移換する、そのまま残す、一時金で受け取る(ペナルティあり)等が選択できる。
401(K)プラン(企業年金連合会)


米国では日本より約20年ほど早くこの制度が誕生しています。日本と少し異なる点としては、マッチング拠出の部分で、日本だと「企業側が拠出している金額に、従事者がマッチングする」ルールですが、米国だと「従事者が拠出した金額に、企業側がマッチングする」ルールになっている様です。なお、マッチング率は企業によって異なり、100%の場合もあれば50%の場合もある様です。
米国だと拠出の主体はあくまで従事者にある、という考えの様です。日本は企業側が主体になっているので考え方が少し異なりますね。

また、401(K)プランに関しては度々ミリオネア(億万長者)が生まれている、という記事も見受けられ、羨ましい限りです。以下の記事では、米国株式(S&P500)と日経平均株価で40年積立投資をした場合のグラフもあり、成長の違いが良く分かります。
「401kミリオネア」を日本にも! 国内の企業型確定拠出年金制度のマッチング拠出の有効活用を(2020/10/23 MORNING STAR)

そして、拠出額。これは大きく違います。
従業員自身の拠出額とマッチの拠出額の合計の法定上限が決められており、2015年度は52,000ドル、50歳以上の従業員では59,000ドルである。
401k(Wikipedia)
(円換算は手間なのでもう100円換算にしてしまうと)最大で520万円まで拠出できる、という事になりますね。米国の賃金の高さ、経済の好調さが窺える限度額です。ますます羨ましい。

IRA(アイラ)


そして日本のiDeCoにあたる米国の制度は、IRA(アイラ)と呼ばれているそうです。

IRAは、1974年の雇用者退職所得保障法(Employee Retirement Income Security Act, ERISA)として誕生した。2013年現在、通常IRA(Traditional IRA)とRoth IRAの二種類が代表的であり、その他に、
SEP IRA
SIMPLE IRA (Savings Incentive Match Plan for Emplyees IRA)
Self-Directed IRA
と呼ばれる制度がある。いずれも拠出金と運用益が非課税或いは課税繰延べの税制上の特典がある代わり、課税優遇部分を59歳半以前に引き出すと10%の罰金を課せられる(2015年現在、ただし本人死亡や全身障碍などの場合を除く)。
IRA (アメリカ)(Wikipedia)

制度自体は1974年誕生なので、401(k)プランよりも4年早いんですね。IRAもおそらくは自営業向けに誕生した制度の筈です。個人主体であるIRAが企業主体である401(k)プランより前に誕生したのは、個人レベルで資産運用の知識も豊富なのだろうな、と思います。

そして、年間最大拠出額は2014年の時点では5,500ドル(100円換算だと55万円)の様です。iDeCoの場合は加入者の勤務状況しだいで拠出額は変わりますが、会社員の場合は月2.3万円までのケースが多いと思うので、そうすると年間約28万円です。個人主体の制度についても、拠出額の違いが分かりますね。

日米の資産運用の違い


米国の確定拠出年金制度を見ても、米国の資産運用は日本と比べると違うことが分かるな、と感じます。

  1. マッチング拠出は個人が拠出した金額に企業側がマッチする
  2. IRAは401(k)プランよりも誕生が4年早い
  3. 拠出額上限を見ても、米国は投資に回す費用が大きい

最も興味深いのは「マッチング拠出は個人が拠出した金額に企業側がマッチする」という部分で、仮に日本がこのルールをマッチング拠出で適用していたら、いまの企業型DCの加入者数ってどのくらい減少するのだろうか…と思います。

そういう意味では、選択制DCの加入者数なども今後は公開してもらえると良いのかも、と思います。選択制DCは自身の意思がなければ加入できないので、これとiDeCo加入者が自主的に制度を利用している人数と言えるのではないか、と感じます。そして、「選択制DC+iDeco加入者」と「それ以外の企業型DC加入者」で比較すると、運用商品の構成などは大きく差が出そうな気がします。

ただ実際には米国でも投資知識の差による問題は生じているようです。下記の記事を見ると、やはり知識の差が大きい、と解説されています。
「アメリカでは資産運用が当たり前」なイメージの裏側にある格差とは(2020/7/20 finasee)

この知識レベルの差については、iDeCoに加入している方はともかくとして、企業型DCに関しては企業担当部署の方により教育制度の充実を図ってもらえたら、と思います。

  1. 元本変動型はリスクもしっかり伝えつつ、リターンへの期待を伝える
  2. 長期投資のメリット面を伝える
  3. 現在の100万円と20年後の100万円の価値の違いを考える

個人的にはこれらの部分が知識レベルの差をなくす上で重要なのでは…と思います。
【本ブログ参考記事】
考察:投資は行うべきなのか?資産運用の視点で考える(2021/3/14)

著者:gnc21
東京都在住。Webサイト・スマートフォンアプリのデータ計測支援や分析業務を行う会社員。
企業型確定拠出年金の運用を2020年より開始。投資運用経験は企業型確定拠出年金のほか、一般NISAによる国内株式の特定銘柄購入、投資信託やETF購入が中心。